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家公演の舞台照明

こんにちは。照明の電気マグロと申します。
 
gekidanU 家公演企画Vol.3『金星』が終わりました。ご来場頂いた方、誠にありがとうございました。
 
 
あ、劇団ブログへの投稿は初めてなので、簡単に自己紹介をします。
 

電気マグロです。メンバープロフィールに書いているとおり、非劇場空間でのライティングを得意としています。

ブログ「照明機材の盛り合わせ」の筆者です。
 
大学時代に京都で演劇サークルの照明をやっていたら色々な団体に照明で呼んでもらえるようになり、就職してからも照明はライフワークにするぞと思っていました。そうしたら舞台美術のよりぐちの紹介で昨年の「弔EXPO’18」の照明をさせて頂くこととなり、そのまま流れで団員になってしまった次第です。
 
ずっと本名で活動していて、別に会社バレとかは問題ないので芸名(?)でやる必要もないのですが、上記のブログやtwitterをそれなりに読んでもらっているので、ネット上での宣伝をしやすくしたいなと思い、東京に来てからはこの名義で活動しています。
 
 
 
 
さて、本題です。記事タイトルのことです。
 
 
けっこう今回、照明に関して「こんなの家じゃないな(笑)」と冗談めかして言われることがありました。
果たしてそれは、100%「良い」と言えるものなのか?という自問自答です。
 
 
 
確かに今回、家公演にしては照明を本格的に作りました。特に、

・作中でキーとなる「タイムマシン」が起動され、飛び立つまでの一連の照明効果

・終盤に作中の「金星」の象徴である雨が降ってくるシーン以後の照明効果

の2点に関しては、明らかに「演出照明らしいこと」をやっているので、見ていた方にもすぐわかったと思います。

 

 
 

この部分については想定通りで、当初より演出のヒガシからも「こういうシーンの“けれん味”を出すために照明を使ってくれ」というオーダーがあったので、仕込み図面の段階から「ベランダ」部分の灯体密度がかなり濃くなっています。

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よって、ここがド派手な「いかにも舞台演出照明!」になるのは全く問題ありません。
 
 
問題は、家の内側の部分。物語のほとんどの時間が過ごされる、リビングの照明です。
 
実は今回、35ページある台本のうち、3ページ~24ページまでは照明変化がありません。「家のリビングの明かり」が約1時間に渡って継続されます。
 
 
個人的な信条として、演劇照明の主な役割のひとつが「日常性⇔非日常性のコントロール」だと思っているので、このシーンについては「日常に全振り」で作るべき、のはずです。
 
しかし実際には、このシーンの照明についても「舞台っぽいね」という評を、直接ではないにせよ、ちらほら頂いたような気がします。
 
これが想定外でした。プランナーとしては「日常全振り」で作ったつもりなのですが、少し「非日常」の下駄が履かされていたようです。
 
 
 
…理由は多分、これ。

シーリング

上のシミュレーション画像で光っている方向からの明かりです。劇場で言う「前明かり」に相当する明かり。
 
 
この明かりが無いと真上からの明かりだけになってしまい、役者の表情がよく見えないという致命的な欠点があります。
 
 
よって、演劇の照明では必ず使われる明かりです。当然今回も、日常のシーン全般にわたって、前明かりを70%程度の明るさで点灯していました。
 
 
ところがどうも、これが「非日常」の成分を持っていて、本来「家なのに舞台照明してるね~」と言われる想定をしていなかった、日常のシーンまでが「舞台照明してる」になってしまった可能性が否めません。
 
…まあ、一般家庭の生活用の明かりとしては存在しない方向の明かりですから、当然と言えば当然です。
 
しかし、(舞台照明を見慣れた)自分が思っているよりも、この明かりの非日常成分は強かったのかもしれません。
 
 
…そういうわけで、好評を頂いた「あちら側」(ベランダ側) の照明とは全然違うところで、勝手に思うところのあった公演でした。(笑)
 
 
 
 
アフタートークでお呼びした「裃-這々」さんは、家公演と言っても全く照明などを使用しない、素の家を使うそうです。
 
多少の照明効果を差し置いても、そっちの方がいい場合もあるのかもしれないな……