手記


野外に放置した灯体は錆びる

こんにちは。照明の電気マグロです。『インディゴチルドレン』終演後初の投稿です。ご来場頂いた方、配信をご覧いただいた方、これからデータ版でご覧になる方、ありがとうございます。

ところで、野外公演って照明の雨対策大丈夫なの?と毎回聞かれます。劇団内部からも聞かれます。

結論としては、今年初めて錆びました。

塗装が剥げて錆びてしまったベビースポット(明光社製)

これまで主に使ってきた灯体のうち、以下はそもそも防滴以上の性能があるか、防滴ではなくても雨の影響をあまり受けませんでした。

  • 防滴パーライト(松村 WPL-5)
  • ソースフォーPAR
  • 防水LED PAR
  • 屋外用ハロゲン投光器

それでも昨年までは休演日にブルーシートやゴミ袋などで防水カバーを作ってかけていたのですが、こうした経験から、今年は正直いいかな、と思って、ほぼ2週間ほど野ざらしにしていました。

そうしたら錆びてしまいました。(悲)

要因は色々あって、錆びた灯体は元々防滴ではない上に、塗装が剥げ気味だったこと、梅雨明けが遅く雨の日が多かったこと、さらに仕込み週が例年より1週間早く、灯体が晒される期間も長かったこと。また、錆びた灯体は少し特殊な位置を照らすため、若干上を向いていて、水が溜まりやすかったこともあると思います。

とは言え、本当に錆びるとは思わず、気づいた時はなかなかショックでした。しかも同機種を3台吊っているのに、錆びたのは1台だけです。

しかし、何事も経験しないと「閾値」が分からないことってあります。「灯体を粗末にしやがって」と言われるかもしれませんが、どこまでやったら「粗末」になってしまうのか見極めることもまた、灯体研究の一環だと思います。(そういうことにしておいてください)

この写真でちょうど脚立のそばにある子が錆びた子です

EXPO20 gekidanU野外本公演「インディゴチルドレン」終了いたしました。

本当に皆様、ありがとうございました。

今回も本当にやれてよかったし楽しかったです。

 

公演が実際に終わったのが731日なので、半月以上も経ってしまっており、だいぶ今更感がなくも無いですね。

 

ただ、クラウドファンディングの特典送付や映像のツイキャス配信、
データ販売の予約分送付など、一連の作業が全て終わったのが今日で、
かつ僕は「インディゴチルドレン」の翌週にシアターグリーン box in boxという振り幅がエグいめちゃくちゃきちんとした劇場でやる芝居の舞台監督の現場を入れてしまっており、
まあ死んでおりまして、こういう文章を書ける気力と体力を回復したのがやっと今日だった、という感じです。

 

回復させるべく、先週末は生まれて初めて猫カフェに(猫アレルギー克服の確認も兼ねて)行ったりしました(いけた)。

 

この夏に向けては、このタイミングで創作するのだから、せっかくだから、ということで、
企画段階から、映像配信を決め、開催にごきつけ、中止を決めた直後まで、都度都度noteにその時々のことは記して来たので、その辺りは今さら触れず、今日は作品それ自体の振り返りと今後の話をしたいなぁという気持ちでいます。

 

「インディゴチルドレン」について

 

今回の作品については今まで作ってきた野外劇に比べて、
かなり「野外劇っぽくない」芝居を作ったなぁという気持ちがあり、
実際今回は僕がそうしたくて作ったのでその通りになっただけなのだけど、
いわゆる「野外!!!」って感じの芝居じゃなかったので、
物足りなかった感じとか肩透かし感があった方もいたのかなと思っています。

 

今までは家のベランダをガッツリ使って舞台にしたり、バイクで入退場をしてみたり、
コーヒーをぶっかけたり、螺旋階段を組んでみたり、花火を使ってみたり、
派手な幕落とし屋てみたり、色々やっていたのだけど、
今回はそういうギミックみたいなものは使わず(池の湧き水くらい)、舞台の向きも今まで家を背景にしていたところから、ほぼ真逆の十字路の角を背景に作品を作りました。

また、背景を幕でなく半透明の青色のネットを張って仕切る形になりました。

 

 

この結果、だいぶ野外(家)というものが今まではすごく具象的な要素になっていたところを、
今回はあくまでネット越しの公道や住宅を背景として取り込んで、
その手前の舞台上の芝居によりフォーカスしたものになったかなと思います。
結果より会話劇の要素が高まったのかなと思っています。

 

今までのものも評判よかったし、なぜわざわざちょっとテイストを変えたんだい?というところについては、
このタイミングで挑戦しておくことは、
今後gekidanUとして継続してよりよい演劇を作るにあたって必要かなと思ったところと、
「単純にやってみたかった」というところが強いです。

 

ここ2年間ほど、夏の野外劇はあと2団体に参加いただいてフェスっぽい形にしてきました。
そのおかげで、かなりの方にこの場所を知っていただけたのかなと思っており、劇団として飛躍のきっかけになったなと思っています。

 

で、今年は久々に単独公演でやってみよう、ということで満を持してやる上で、今まで頼り切っていた「野外」という要素の比重を一度適正化して作品を作ってみよう、という気持ちになりました。

 

我々の団体の魅力とかアイデンティティはこの場所に根付いた創作やそこでの遊び心を具現化してワクワクさせること、だと自認していますが、作品の強度をしっかりと強めることも必要だと思っています。

 

野外だとギミックで作りやすいカタルシスに頼りすぎずに、強度を増していくような作品をきちんと丁寧に作ってたものをお届けしたいな、と企画段階から思っていました。

 

ある意味狙い通り、今回は野外劇であるというところだけでなく作品内容への言及も比較的多めにいただいていたので、良かった部分ではあるかなと思います。

 

もしご覧になっていなくてどんな感じか気になった方は、下記で公演のデータ販売(バックステージ映像付き)も行っていますので、御覧くださいませ。

https://gekidanu.booth.pm/items/2265817

 

作品つくりについて

 

ちょうど3月連休に他団体のProduce公演という形で僕が主演の公演を行い、
その後に本腰を入れて公演準備をしていたのですが、
この辺りからかなり状況が厳しくなっていたコロナウイルスの影響で脚本の遠藤の仕事がかなり忙しくなり、
執筆にかなりマイナスの影響が出たり、顔合わせや初期の読み合わせはオンラインで行うことになったり、
稽古中は基本マスクだったり、都度色々なことが起きて大変は大変でしたが、
まーまー座組全体として前向きにやっていけたんじゃないかなと思います。

座組もしっかりまとまっていて、稽古も凄く楽しかったです。

(なにより、この時期に野外劇をやれたことはちゃんと胸を張るべきことかなと思います。)

 

ただ、今までにない状況ゆえもありつつ、及び今後に向けて改善していきたい反省みたいなところも凄くあって、

大きなところで言うと、今回キャストに対して「線路を引いてあげすぎたかもな」というところが非常にあります。

 

前述の通りの状況だったこともあり脚本に僕が早い段階で入ったり、

いつ感染状況が悪化して満足に稽古出来なくなるかわからない、という中だったこともあり、

凄く早い段階からプランと組み立てができていて、3週間くらいで全編通せちゃうくらい、とても良い完成度で来てました。

 

加えて、舞台機構や美術、照明、音楽等劇団メンバーで担当している部分も、久々に単独公演での野外劇だったこともありサクサクと進んでいっており、順調な感じでした。

 

そうした中で、キャストさんに対して全体的に「外枠」を埋めるのが早すぎたかな、というところ、
こうした野外劇ほぼ初めてのキャストさん達に対して、団体としてこの場所でそれなりに経験を積んできた演出チームが過度に背負いすぎたのかもなという感覚があり、

もっと役者さんにある意味「不自由」とか「ストレス」とか、自分で可能性を高めたり状況の打開をしてもらう環境を作っていたら、
もっと役者さんが飛躍してくれたかもかなぁと、今になって思っています。

 

ここに関しては劇団員に役者がいないことも一つ影響しているのかもなと思いつつ、
言葉を尽くしすぎてしまう僕の演出スタイルとか、役者への信頼の表し方とか修正の示し方とか、
あらゆる面でもっと考えられるところはあるのかなとも思いますし、
責任を感じつつ、これから頑張っていきたいポイントだなと考えています。

 

今後の話と今思ってること

 

2日残しての中止を判断しつつも、それまでに来場頂いた皆様やクラウドファンディングのご支援、映像の視聴等のおかげで、

今回の上演によって今後の活動に影響が出るようなことはほぼ無く、

「次回の家公演をどうするか」を今考えている状況にあります。
8月中には一旦方針が決まるかなと思います。

 

またいろんなことを感じることになるんだろうなと思いますが、

創作できるのはとても嬉しいです。

個人的は今年10月に予定していた結婚式が飛んだこともあり、時間ができてしまっていて、

でなにかやれることやろうかな、と思っています。満を持して脚本とかかな、まだわかりませんが

 

タイトルの通り幸せなことにめっちゃ演劇した感じのする夏でしたが、

その分いろんな疲れとか、気持ち悪さとか、ぐるぐるする気持ちとか、

それはまあ背負い込んだし飲み込んだし食らったなぁと思います。

 

ただ、千秋楽になった公演の最中にTwitterでつぶやいたのですが、

「演劇の敗北」とか「演劇の死」とか、そんな話は僕にも他の人にもきっとどの場合にも当てはまらなくて、

もしかしたら何かの過渡期に僕らはいるかもしれないし、はたまた一時的なことかもしれないし、

そんな中でできることは、できる人ができる限りこの場ときちんと直面して精神に記憶して記録することかなぁと思います。

 

自分でも呆れるくらい物事を悲観しないので、僕はそれにぴったりだなぁ、と思いつつ、

疲れすぎないように、健やかに日々を過ごしていきたいです。

 

あと、もし創作の機会や場所が無くなってしんどいなぁ、という方は、

我々稽古や公演可能なアトリエ持ってたり色々揃ってたりするので、なんかやりましょう。

すごいほわっとしてるけど、しばらくはそういう人のための場所であり、劇団であることもいいんじゃないかなと思っています。

https://gekidanu.com/atelier5-25-6

 

引き続き、よろしくお願い致します。

こんにちは。照明の電気マグロです。

『インディゴチルドレン』、おかげ様で満席の回も出てきています。昨年に比べて座席数半分、かつ増席や立ち見席も無しという状況ではありますが、それでも見に来て頂けるのは大変ありがたいことです。

演出のヒガシも時々言及していますが、東京オリンピックのために用意された4連休、会場は近くにゲストハウスの多い地域でもあり、企画段階では「当日券対応」「酔客対策」とかを考えていました。まさかこんなことになるとは。

照明は仕込み増員にも恵まれ、程よく新たな挑戦を取り入れた明かりを作れています。ハード面では3階からの投光(大劇場みたいでカッコいい)、ソフト面では野外劇としては比較的繊細な演出に対応する明かり。特に演出のところは、お祭り的な粗さを排した小劇場的な演出を取り入れていて、役者さんへの負荷が大きそうだなと傍目に思いますね。

ツイッターでも書きましたが、昨日は途中で雨対策の屋根(銀シート)の端部がピロピロしてしまって、まさにそれが重要なシーンで使うスポットライトの延長線上にあるという照明的ハプニングもありました。
このままでは当該の照明が成立しないと思ったので、急遽懐中電灯でフォロースポットを入れました。こういうのも野外劇の醍醐味ですよね。

雨対策の銀シート

私は音響オペの横田さんと一緒に、2階のベランダから見下ろす形で照明を制御しています(これも大劇場の調光室みたいでちょっとリッチな気分です)。

ベランダに向かってオペする人たち

まだ来週も公演はありますし、「観たいけどこのご時世ちょっと」という方向けに、クラウドファンディング映像化プロジェクトも進行中です。注目して頂ければ幸いです。

※ちなみにタイトルの通り、どこかに180秒かけてフェードチェンジする照明があります。暇な方は見つけてみてください。

●公演詳細・ご予約 https://gekidanu.com/tomurai20

●映像化プロジェクト https://fanbeats.jp/projects/55

ヒガシナオキですこんばんは。

だいぶ久々の更新ですが、訳がありまして、

公演直後などを除いてはほぼ僕のブログみたいになっていて、

個人としての発信の場をちゃんと別に作ろうかなと思い、noteを作りました。

https://note.com/nao181715

そこにけっこうなペースで更新してるので、よかったらこちらも見てみてください。

演劇以外のこともけっこう書いています。

そこに書いた内容と同じですが、最近劇団に起きたことをまとめた記事を書いたのでこちらにも載せます。

 

ここ最近劇団として出す情報がたくさんあって、

それぞれの公開作業に追われていました。

どれも嬉しいことなので苦ではなかったし、

せっかくなのでそれぞれのことについて自分の気持ちと添えて書きつつ、

3月の公演が終わってからここまでもちろん色んなことを考えたので、個人として言いたいことを一旦まとめたりしようと思います。

①劇団メンバーが「日本照明家協会賞舞台部門 新人賞」をとったよ

 

照明の電気マグロ氏が上記の賞を受賞しました。

これは本当にびっくりしました。

彼自身の受賞については彼の照明に対する偏愛と言うべきまでの愛情と熱意を見ていたら、純粋におめでとうなのだけど、

驚いたのは、対象となった公演が、我々が拠点としている南千住の住宅のキッチン兼リビングを改造した「家劇場」での公演だったからです。

この賞、名前の通り日本照明家が毎年行っているもので、テレビ部門と舞台部門があり、舞台部門に関しては演劇公演の他にコンサートやLIVEも対象になり、昨年の新人賞の一人はSAYAIRの日本武道館公演、一昨年はセカオワの埼玉スーパーアリーナ公演で受賞しています。

そんな規模の公演と100名程度が観た東京の端っこの民家で行われた芝居が同じ賞で褒められる、というところにめっちゃ感感動しています。

我々gekidanUは、いわゆる一般の「貸し劇場」という場所でやってはおらず、自分たちで自由が利く空間を使って演劇を作っていて、結果家や野外など、変則的な公演になっています。

とはいえ、少なくとも僕個人の意識としては「ヘンなことを狙ってやっている」という意識は毛頭なく、「持続可能な形でできる限り良い環境で演劇をやる」ために選んでる手段がこれ(これに関しては最近演劇の偉い人が「国から援助をもらう」ことで劇場を守ろうとして叩かれてるのを観てて、より一層感じている、長くなるのでこのくらいでやめとく)、というところなので、「環境ありきの芝居」だと思ってはいません。

ガッツリ演出もつけるし音も鳴るし照明もピカピカします。こんなふうに。

 

 

要は色物のつもりなくやってるよ、ということなのですが、

実際観たことない人にはなかなか伝わりづらいだろうな、とは思っています。

そんな中でこの賞がとれた、という事実にかなり僕は勇気づけられています。

非協会員で普段はサラリーマンの電気マグロ氏が、さまざまな書類と資料集めに奔走し、応募したこの公演の照明が「舞台芸術」としてきちんと評価されたことがすこぶる嬉しいです。

ここ2,3年ちょくちょく「続けててよかったな」と思うことは結構あるが、その中でも有数の出来事の感はあります。

 

②新メンバーが増えたよ

 

 

かっこ付けたビジュアルですね。

昨年から制作をやってくれていたメンバーが加入して6人になりました。

当団体の特徴として、下記のような形で「みーんな基本裏方」というのがあります。

 

-遠藤遊(脚本)

-ヒガシナオキ(演出/舞台監督/役者/制作)

-よりぐちりょうた(舞台美術/Web制作・SE)

-電気マグロ(照明/アトリエ施工)

-鈴木明日歌(音楽/音響/役者)

-しろ。(制作)

 

宣伝美術以外はだいたいのセクションが揃っています。

これも「ハード」を持って活動をしている我々としての1つの特徴だと思っていて、ベストな形かなと思います。

個人的には「劇団」がやりたかったので、ここ3年で4人新たに入ってくれた今の状況はとっても嬉しい以外の何ものでもないです。

 

③「スペース貸し」を本格的にはじめました

 

「場を持っている」団体としてのブランディングと実益を兼ねて、「レンタルアートスペース」としての貸し出しを正式にはじめました。

インスタベースに掲載してます。

https://www.instabase.jp/space/4836045484

(もしコレ観て使いたいな、ってなった方は、こちらからでなく直接劇団か僕宛にご連絡してくれたほうがお安くできるのでお気軽にどうぞ)

 

今までも知り合い中心にお貸ししたりはしてたのだけど、

今後本格的に開かれた場所にしていこう、という方針です。

2年前から「家公演」という形で始めて以降、徐々に進めていた計画を形にしている感じ。

 

最近夏にやる野外劇を複数団体参加型にしてたのも、「場」をつくる、というところを強く意識していたという理由もあります。

 

61日~再開予定のスタジオが多いらしく、緊急事態宣言解除後にはじめましての方から早速申し込みが2件あり、それぞれ映像、写真撮影に使っていただきました。

「見知らぬ人に貸す」というところで、整備すべきところ気をつけなきゃいけないところがいろいろ出てきていますが、一つ一つ解決しつつ進めています。

 

④今年の夏の野外劇のタイトル・ヴィジュアル公開をしたよ

 

 

詳細情報ページ

弔EXPO’20

 

ホントに住宅街の野外劇で、毎年近隣の方々に多大なるご協力をいただいている公演になるので、このような状況の中だとなおさらきちんと説明だったり準備せねば、ということで、取り急ぎヴィジュアル面だけ、公演方針や防止対策含めた全情報公開、及びチケット予約開始は615日(月)より行います。

しかしここまで来るのでも、けっこう色んな議論をしました。

劇団内連絡はSlackで行ってますが、上記の色々含め、

それぞれがそれぞれのことを動いていることでけっこう色んな連絡が飛び交っています。

ただこの状況で仕事がめちゃくちゃ過酷なったり、減っちゃったり、個々の状況が変わったりすつことはメンバーがほぼ会社員である我々にも起きており、表立った公演が無い中でも、なかなか試されてるなという状況だったこの3ヶ月でした。

なのでひとまずここまでこれたことに安心しています。

 

今回の「インディゴチルドレン」ですが、

一言で言ってかなり挑戦します。

今まであそこで観たことある方は「ついにこうやるのか」と思ってくれるかなと思います。楽しみにしててください。

お話も、最近の爽やか路線だけじゃない感じになかなかなってると思います。結構僕の意向も入りつつ、主張をしてる作品になってくれるかなと期待してます。

 

なので、純粋にやりたいやりきりたい。

 

どうなるかわからないし抗えないものもあるかもしれないけど、その気持ちは常にしっかり持って頑張っていこうと思います。

 

応援いただければ嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

普通の舞台照明をしよう

こんばんは。電気マグロです。

 

東京のサラリーマンなので、御多分に洩れず在宅勤務体制に入っております。

こんな状況でも宅配便ちゃんと届くのすごいな。

 

そして、ヒガシも書いていましたが、いろいろな意味で「貧しい」、どっちかといえば精神とか考え方の深さ的な意味で貧しい国(政治)の下で暮らしているなと思う日々です。

 

あー、そんな話がしたいんじゃなかった。

 

 

改めまして。

アトリエ5-25-6 Produce Vol.2 犬小屋計画『一人夜明けにパンを焼く』ご来場いただきありがとうございました。

 

照明的には、今回は非常に「普通の照明」をやったんじゃないかと思います。

この「普通」が、家公演という環境を考えるとそんなに普通じゃないと思うので、その辺を話します。

 

 

演出からの要望

今回の演出家「サンいぬ」さんは、同人漫画家であり、観劇頻度は高いが演出をつけるのは初めてということで、主演でもあったヒガシを中心にgekidanUメンバーにて演出補佐的な役割も担っていました。
よって照明の演出要望についても、最初はヒガシ伝手で聞いたのですが(後にサンいぬさん本人も交えて確認しました)、

  • 朝日
  • 現実と回想との切り替えを行いたい
  • ラストの「仄青い明かり」(これはト書きに書いてあるので脚本=遠藤の指定)

くらいしか特別なことが無くて、逆に不安になりました。

というか、演劇的にはごく普通の要求なのですが、家公演というのはそもそも環境が特殊なので、たとえば「現実と回想の切り替え」のようなことは難しいのです。

 

反対に「海」のようなコテコテの飾り明かりの方は、ほとんど機材自体の効果でゴリ押ししてしまうので、家の構造に光を当てると程よく日常と非日常の引っ張り合いが取れて、簡単だったりします。

画像

 

昨年の『金星』のタイムマシンのシーンなどは典型的にそのパターンですね。効果範囲も、狭いベランダの中だけに留まっていますし。

 

そういうわけで、「こんなのでいいのかな…?」と思いながら直前まで過ごすという、何ともモヤモヤした幕開けになりました。

 

※また今回の公演期間中、仕事の方が非常に多忙を極めていたこともあり、ついに仕込み図すら描かずに仕込みを始めてしまったのも、不安要素の一つでした。

 

 

「手札」という言葉

そんなこんなで、苦し紛れにひねり出した20ch程度の照明で絵作りを開始することになりました。
間に合ってなかったのと、シーン数が少なかったこともあり、場当たりを長めに取ってもらって、場当たりしながら絵作りをさせてもらいました。

最初に一通り、仕込んだ照明を1chずつ見てもらったのですが、その時にサンいぬさんが、「この手札で照明を作るんですね」と仰ったことをよく覚えています。

照明の絵作りを見たことある方ならわかると思いますが、チャンネル単独の照明は、ほとんど何だか良く分からない、寂しいスポット的な光でしかなく、組み合わせて初めて“照明”が立ち上がってきます。

こういう断片を見て、「手札だ」とわかる演出家さんは、そんなにいないと思い、印象に残っています。

 

 

 

回想のシーン

ここからは具体的な照明シーンの話ですが、まず「回想」のシーン。主人公であるニシくんが、現実と回想を行ったり来たりするため、これを照明で表現することが必須でした。

 

ところで個人的に、回想は「赤い回想」と「白い回想」があると思っています。

専門的にいえば、①通常明かりに対して色温度を低くすることで回想を表現する方法と、②逆に色温度を高くすることで非現実感を出し、回想の表現とする方法です。

 

前者は#35、#45、#A-5、辺りで、懐かしい回想という感じ。後者は#79、#BL-1、#B-5、辺りを使い、幻想的な回想という感じですかね。

 

どちらの回想を使うかは、その時々の演出的な判断によるわけですが、今回は珍しくハード的な制約で「白い回想」をチョイスしました。

 

家に元々ある基本明かりが白熱電球のダウンライトとシャンデリアで、ベースの色温度が低めなので、これと対照的にするために、必然的に白っぽくすることにしました。

 

シャンデリアを使わずに「もう一つの地明かり」が作れるかどうか不安でしたが、昨秋に常設したダクトレールの一番端にミニフレネルを吊って#00を入れたところ、ちょうどよくフラッドな地明かりになったので良しとしました。

 

 

 

ベランダの照明

何かと毎回エモめの絵が生まれがちのベランダ部分ですが、これも今回、舞台照明的にはとても「普通」のことをやっています。

画像

#A-3を入れたFQと、LEE#201 (#B-5相当) を入れたFQを1発ずつ。それと椅子に当てる凸が1発。

A-3とB-5は若干光の方向性が違うのですが、学生劇団がよくやるA-B混色の変種ですね。そこに凸を1発入れることで「広い」〜「狭い」の軸も生まれて、いかにも演劇照明って感じです。

 

 

 

まとめ

まとまりのない文章ですが、総合して今回の公演は、家公演という特殊な環境でありながら極めて「普通の」演劇照明を実施したという感触が強く残っています。

 

これはある意味、設備改修も含めてこの家劇場という場所の使い方に習熟してきた証かなと思います。

 

逆に言えば、これからが本当の意味で舞台照明的な価値を問われる時期と言えるわけで、次回はさすがに、仕事が忙しくても図面も描かずに仕込みになだれ込むのは厳しいかな、と思っています(笑)

 

 

実は他にも、朝日・夜明けの表現の仕方とか、Philips Hueを使ってみた感想とか、色々書きたいことはあるのですが、それは追々個人ブログにでも書くことにします。

 

皆さんも時節柄、お体ご自愛ください。